WBCに参加すると個人成績は落ちるのか?
ワールド・ベースボール・クラシック日本代表に選ばれた選手は、貴重なキャンプ期間が削られ、シーズン前から精神的にも厳しい戦いを強いられる事になります。
WBC公式球とNPBで使っているボールの違いの問題もありますので、参加する選手は、WBC公式球でトレーニングを行う必要があります。
もちろん、貴重な経験が詰めますので、それが成績にどんな影響を及ぼすのかを見ていきたいと思います。
WBC2013選手リスト
選手 | ポジション | チーム(当時の所属) |
---|---|---|
涌井秀章 | 投手 | 西武 |
能見篤史 | 投手 | 阪神 |
澤村拓一 | 投手 | 巨人 |
今村猛 | 投手 | 広島 |
田中将大 | 投手 | 楽天 |
杉内俊哉 | 投手 | 巨人 |
前田健太 | 投手 | 広島 |
森福允彦 | 投手 | ソフトバンク |
内海哲也 | 投手 | 巨人 |
大隣憲司 | 投手 | ソフトバンク |
牧田和久 | 投手 | 西武 |
山口鉄也 | 投手 | 巨人 |
攝津正 | 投手 | ソフトバンク |
相川亮二 | 捕手 | ヤクルト |
阿部慎之助 | 捕手 | 巨人 |
炭谷銀仁朗 | 捕手 | 西武 |
鳥谷敬 | 内野手 | 阪神 |
井端弘和 | 内野手 | 中日 |
松田宣浩 | 内野手 | ソフトバンク |
坂本勇人 | 内野手 | 巨人 |
松井稼頭央 | 内野手 | 楽天 |
稲葉篤紀 | 内野手 | 日ハム |
本多雄一 | 内野手 | ソフトバンク |
糸井嘉男 | 外野手 | オリックス |
中田翔 | 外野手 | 日ハム |
内川聖一 | 外野手 | ソフトバンク |
長野久義 | 外野手 | 巨人 |
角中勝也 | 外野手 | ロッテ |
各選手のWBC前シーズン(2012シーズン)と、WBC後シーズン(2013シーズン)の成績を比較していきたいと思います。
涌井秀章
年 | 試合数 | 先発 | 勝 | 負 | セーブ | ホールド | イニング数 | 防御率 | WHIP |
---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|
2012 | 55 | 3 | 1 | 5 | 30 | 3 | 63.0 | 3.71 | 1.40 |
2013 | 45 | 11 | 5 | 7 | 7 | 13 | 92.1 | 3.90 | 1.28 |
涌井投手は、2011年までは先発しかやってきませんでしたが、2012年は開幕からの不調と女性問題により、先発から抑えに転向しました。そこで30セーブを上げる活躍をして、サムライジャパンに選ばれる事になりました。
2013年のWBC後は先発復帰も、やはり不調で中継ぎ降格となりましたが、途中からは調子を取り戻していました。
全体としては、2012年よりも成績は下降でしょうか?2014年以降は、ロッテにFA移籍して、復活を遂げるといった感じです。
能見篤史
年 | 試合数 | 勝 | 負 | 防御率 | WHIP |
---|---|---|---|---|---|
2012 | 29 | 10 | 10 | 2.42 | 1.07 |
2013 | 25 | 11 | 7 | 2.69 | 1.08 |
能見投手は、WBC前シーズンもWBC後のシーズンもあまり変わらないですね。
澤村拓一(沢村拓一)
年 | 試合数 | 先発数 | 勝 | 敗 | ホールド | 防御率 | WHIP |
---|---|---|---|---|---|---|---|
2012 | 27 | 26 | 10 | 10 | 0 | 2.86 | 1.33 |
2013 | 34 | 22 | 5 | 10 | 6 | 3.13 | 1.14 |
澤村投手は悪化ですね。2012シーズンまでは、新人から2桁勝利を2年続けて記録していましたが、それも途絶え、シーズン後半には、中継ぎに配置転換されました。
今村猛
年 | 試合数 | 勝 | 敗 | セーブ | ホールド | イニング数 | 防御率 | WHIP |
---|---|---|---|---|---|---|---|---|
2012 | 69 | 2 | 2 | 4 | 26 | 85.2 | 1.89 | 1.06 |
2013 | 57 | 2 | 5 | 3 | 18 | 65.1 | 3.31 | 1.50 |
今村投手は悪化ですね。
防御率、WHIPともに大幅に悪化していますし、中継ぎ投手の評価のバロメーターともなる登板数も減っています。
田中将大
年 | 試合数 | 勝 | 敗 | セーブ | 防御率 | WHIP |
---|---|---|---|---|---|---|
2012 | 22 | 10 | 4 | 0 | 1.87 | 1.03 |
2013 | 28 | 24 | 0 | 1 | 1.27 | 0.94 |
マー君は、評価するのも馬鹿らしいですね。
2012年の成績が、どうのこうのとかではなく、2013年が24勝0敗の伝説的なシーズンです。この2013年を最後にMLBに移籍していく事になります。
杉内俊哉
年 | 試合数 | 勝 | 敗 | 防御率 | WHIP |
---|---|---|---|---|---|
2012 | 24 | 12 | 4 | 2.04 | 0.98 |
2013 | 24 | 11 | 6 | 3.35 | 1.12 |
杉内投手は悪化ですね。2012年シーズンは巨人に移籍してきた初年度ですが、ノーヒットノーランも記録するなど、怪我もありましたがいい成績でした。
2013年シーズンは、勝ち星こそあまり変わりませんが、防御率は大幅に悪化しました。
前田健太
年 | 試合数 | 勝 | 敗 | 防御率 | WHIP |
---|---|---|---|---|---|
2012 | 29 | 14 | 7 | 1.53 | 0.99 |
2013 | 26 | 15 | 7 | 2.10 | 0.96 |
全体的な成績としては防御率は若干悪化していますが、ほぼかわらないですね。ただ、2013年シーズンは怪我を繰り返しましたので成績への影響は抑えましたが、WBCの影響があった事は間違いないでしょう。
森福允彦
年 | 試合数 | 勝 | 敗 | セーブ | ホールド | 防御率 | WHIP |
---|---|---|---|---|---|---|---|
2012 | 65 | 2 | 5 | 17 | 24 | 1.39 | 0.98 |
2013 | 57 | 3 | 2 | 0 | 15 | 2.58 | 0.90 |
防御率は悪化していますが、WHIPは更によくなっていますし、WBC前後のシーズン、どちらも素晴らしい成績って感じですね。
内海哲也
年 | 試合数 | 勝 | 負 | 防御率 | WHIP |
---|---|---|---|---|---|
2012 | 28 | 15 | 6 | 1.98 | 1.15 |
2013 | 25 | 13 | 6 | 3.31 | 1.27 |
勝ち星こそあまりかわりませんが、防御率が大幅に悪化です。そして内海投手の場合、このシーズンから低迷を続けているといった感じです。
大隣憲司
年 | 試合数 | 勝 | 負 | 防御率 | WHIP |
---|---|---|---|---|---|
2012 | 25 | 12 | 8 | 2.03 | 1.09 |
2013 | 7 | 3 | 3 | 3.38 | 1.22 |
大隣投手は、わかり易く悪化ですが、2013年は、難病の黄色靭帯骨化症が発症して手術を行っていますので、2012年シーズンとの比較は無意味ですね。
牧田和久
年 | 試合数 | 勝 | 負 | 防御率 | WHIP |
---|---|---|---|---|---|
2012 | 27 | 13 | 9 | 2.43 | 1.19 |
2013 | 26 | 8 | 9 | 2.60 | 1.25 |
WBC後のシーズンは、若干の悪化といった感じですが、ちょっと勝ち運がなかったので、少しかわいそうな面もありますね。
山口鉄也
年 | 試合数 | 勝 | 負 | セーブ | ホールド | イニング数 | 防御率 | WHIP |
---|---|---|---|---|---|---|---|---|
2012 | 72 | 3 | 2 | 5 | 44 | 75.1 | 0.84 | 0.72 |
2013 | 64 | 4 | 3 | 6 | 38 | 66.2 | 1.22 | 0.96 |
2012年が素晴らしすぎた事もありますが、2013年シーズンは悪化しました。もちろん合格点以上の成績ですが、内容的にはかなり落ちた感じがありました。このシーズン以降も成績は下降線です。
摂津正
年 | 試合数 | 勝 | 負 | 防御率 | WHIP |
---|---|---|---|---|---|
2012 | 27 | 17 | 5 | 1.91 | 1.04 |
2013 | 25 | 15 | 8 | 3.05 | 1.11 |
2012年は、沢村賞を受賞するなど素晴らしい成績でした。2013年シーズンも15勝を上げるなど素晴らしい成績です。ただし、防御率はかなり悪化してしまいました。
2012年をピークに成績は下降線です。
相川亮二
年 | 試合数 | 本塁打 | 打率 | OPS |
---|---|---|---|---|
2012 | 72 | 1 | 0.245 | 0.604 |
2013 | 66 | 6 | 0.279 | 0.739 |
WBC後シーズンは打撃成績が大幅にアップしました。キャッチャーとしては十分な打撃成績でしょう。2012年は怪我の影響で72試合の出場でしたが、2013年シーズン以降は、中村悠平選手の台頭、この後、出場機会が減り巨人へFA移籍することとなります。
阿部慎之助
年 | 試合数 | 本塁打 | 打点 | 打率 | 出塁率 | OPS |
---|---|---|---|---|---|---|
2012 | 138 | 27 | 104 | 0.340 | 0.429 | 0.994 |
2013 | 135 | 32 | 91 | 0.296 | 0.427 | 0.991 |
2012年シーズンはキャリアハイといってもいい成績で首位打者、打点王と取りましたが、2013年シーズンは、打率は3割は切ってしまっていますが、OPSはかわらないですし、WBC前後どちらのシーズンも素晴らしい成績です。
炭谷銀仁朗
年 | 試合数 | 本塁打 | 打率 | 出塁率 | OPS |
---|---|---|---|---|---|
2012 | 139 | 0 | 0.194 | 0.232 | 0.466 |
2013 | 141 | 5 | 0.215 | 0.274 | 0.564 |
WBC後の2013年は大幅に成績がアップしました。規定打席にも初めて到達しました。
ただ、盗塁阻止率は0.416から0.246に大幅ダウンしてしまいました。投手の関係もあるので評価は難しいですが、この年だけ低いんですよね。
鳥谷敬
年 | 試合数 | 本塁打 | 打点 | 打率 | 出塁率 | OPS |
---|---|---|---|---|---|---|
2012 | 144 | 8 | 59 | 0.262 | 0.373 | 0.748 |
2013 | 144 | 10 | 65 | 0.282 | 0.402 | 0.812 |
大幅アップですね。出塁率は元々高いタイプの選手ですが、4割超えです。まぁ鳥谷選手の場合、2016年シーズン以外は素晴らしい成績ですからね。
井端弘和
年 | 試合数 | 本塁打 | 打率 | 出塁率 | OPS |
---|---|---|---|---|---|
2012 | 140 | 2 | 0.284 | 0.356 | 0.687 |
2013 | 100 | 1 | 0.236 | 0.323 | 0.596 |
まだ中日ドラゴンズに在籍していたアライバ時代の井端ですね。
WBCとしては、打率0.556で素晴らしい成績でしたが、2013年シーズンは打率0.236と成績を大幅にダウンさせました。2013年シーズン後に、落合博満氏の先導により、年俸減額限度額を大きく越える年俸の提示を受け、中日を退団、巨人へ入団となりました。
松田宣浩
年 | 試合数 | 本塁打 | 打点 | 打率 | 出塁率 | OPS |
---|---|---|---|---|---|---|
2012 | 95 | 9 | 56 | 0.300 | 0.349 | 0.840 |
2013 | 144 | 20 | 90 | 0.279 | 0.314 | 0.758 |
2012年シーズンは、骨折もあり95試合の出場にとどまりましたが、打率は3割を記録しました。2013年シーズンは、打率こそダウンしましたが、ホームランは20本と、ホームランテラス設置前の福岡ドームでは立派な成績です。
坂本勇人
年 | 試合数 | 本塁打 | 打点 | 打率 | 出塁率 | OPS |
---|---|---|---|---|---|---|
2012 | 144 | 14 | 69 | 0.311 | 0.359 | 0.815 |
2013 | 144 | 12 | 54 | 0.265 | 0.334 | 0.728 |
坂本選手は大幅にダウンですね。ショートとしてみれば素晴らしい成績ですが、もろにWBCの影響が出てしまった感じです。
松井稼頭央
年 | 試合数 | 本塁打 | 打率 | 出塁率 | OPS |
---|---|---|---|---|---|
2012 | 106 | 9 | 0.266 | 0.312 | 0.720 |
2013 | 125 | 11 | 0.248 | 0.311 | 0.700 |
若干ダウンといった感じですが、まぁヨコバイの成績ですね。
稲葉篤紀
年 | 試合数 | 本塁打 | 打点 | 打率 | 出塁率 | OPS |
---|---|---|---|---|---|---|
2012 | 127 | 10 | 61 | 0.290 | 0.342 | 0.762 |
2013 | 91 | 3 | 24 | 0.203 | 0.264 | 0.563 |
WBC後の2013シーズンは、大幅ダウンですね。やはり40歳でのWBC出場は身体に応えたようですね。
本多雄一
年 | 試合数 | 本塁打 | 盗塁 | 打率 | 出塁率 | OPS |
---|---|---|---|---|---|---|
2012 | 123 | 0 | 34 | 0.246 | 0.299 | 0.593 |
2013 | 120 | 2 | 22 | 0.283 | 0.352 | 0.699 |
盗塁数は減ってしまいましたが、大幅にアップしました。
糸井嘉男
年 | 試合数 | 本塁打 | 打点 | 盗塁 | 打率 | 出塁率 | OPS |
---|---|---|---|---|---|---|---|
2012 | 134 | 9 | 48 | 22 | 0.304 | 0.404 | 0.813 |
2013 | 141 | 17 | 61 | 33 | 0.300 | 0.384 | 0.852 |
2013年は、WBCの直前に日本ハムからオリックスに移籍しましたが、2013年シーズンも変わらずいい成績ですね。
中田翔
年 | 試合数 | 本塁打 | 打点 | 打率 | 出塁率 | OPS |
---|---|---|---|---|---|---|
2012 | 144 | 24 | 77 | 0.239 | 0.307 | 0.727 |
2013 | 108 | 28 | 73 | 0.305 | 0.381 | 0.931 |
侍ジャパンでコーチをしていた立浪和義バッティングコーチの打撃指導に切れるといった報道がありましたが、2013年シーズンは打率が大幅にアップしましたので、まぁ結果的にはいい経験だったんじゃないですかね?
内川聖一
年 | 試合数 | 本塁打 | 打点 | 打率 | 出塁率 | OPS |
---|---|---|---|---|---|---|
2012 | 138 | 7 | 53 | 0.300 | 0.342 | 0.734 |
2013 | 144 | 19 | 92 | 0.316 | 0.376 | 0.853 |
内川選手は、まぁ毎年素晴らしいですが、ホームランも増えており、成績アップですね。
2013年のWBCで内川選手といえば、プエルトリコ戦のダブルスチール失敗が思い出せれます。
ですが、そもそも、2012年シーズンの内川選手の盗塁はキャリアハイに近い6個ですからね。2塁走者だった井端選手も足が速いと思われていましたが、2012年の盗塁数は4個だけです。
井端選手は確かに若いころは盗塁もそこそこ決めてましたので、首脳陣は足の速いイメージだったかもしれませんが、過去のイメージなんですよね。キャッチャーも盗塁阻止率が5割に近いモリーナでしたから、作戦として無謀でしたね。
長野久義
年 | 試合数 | 本塁打 | 打点 | 盗塁 | 打率 | 出塁率 | OPS |
---|---|---|---|---|---|---|---|
2012 | 144 | 14 | 60 | 20 | 0.301 | 0.382 | 0.815 |
2013 | 144 | 19 | 65 | 14 | 0.281 | 0.336 | 0.760 |
長野選手は、若干の成績ダウンですね。特に、前半戦の打率が低く、WBCの影響が伺い知れます。
長野選手の月別打率
月 | 打率 |
---|---|
3-4月 | 0.237 |
5月 | 0.240 |
6月 | 0.250 |
7月 | 0.313 |
8月 | 0.325 |
9月 | 0.301 |
10月 | 0.421 |
角中勝也
年 | 試合数 | 本塁打 | 打点 | 打率 | 出塁率 | OPS |
---|---|---|---|---|---|---|
2012 | 128 | 3 | 61 | 0.312 | 0.366 | 0.782 |
2013 | 125 | 5 | 43 | 0.288 | 0.360 | 0.763 |
2013年もまずまずの成績でしたが、2012年は、首位打者を取ってますからね。若干のダウンは仕方ないところでしょう。
最後に、あくまでも個人的な印象ですが、成績がダウンしたか、アップしたか、維持したのかをまとめてみたいと思います。
2012年シーズンと、2013年の成績比較
選手 | ポジション | 2013年成績 (2012年と比較して) |
---|---|---|
涌井秀章 | 投手 | ダウン |
能見篤史 | 投手 | 維持 |
澤村拓一 | 投手 | ダウン |
今村猛 | 投手 | ダウン |
田中将大 | 投手 | アップ |
杉内俊哉 | 投手 | ダウン |
前田健太 | 投手 | 維持 |
森福允彦 | 投手 | 維持 |
内海哲也 | 投手 | ダウン |
大隣憲司 | 投手 | ダウン |
牧田和久 | 投手 | 維持 |
山口鉄也 | 投手 | ダウン |
攝津正 | 投手 | ダウン |
相川亮二 | 捕手 | アップ |
阿部慎之助 | 捕手 | 維持 |
炭谷銀仁朗 | 捕手 | アップ |
鳥谷敬 | 内野手 | アップ |
井端弘和 | 内野手 | ダウン |
松田宣浩 | 内野手 | アップ |
坂本勇人 | 内野手 | ダウン |
松井稼頭央 | 内野手 | 維持 |
稲葉篤紀 | 内野手 | ダウン |
本多雄一 | 内野手 | アップ |
糸井嘉男 | 外野手 | 維持 |
中田翔 | 外野手 | アップ |
内川聖一 | 外野手 | アップ |
長野久義 | 外野手 | ダウン |
角中勝也 | 外野手 | ダウン |
予想通りですが、投手はダウンした選手が多いです。やはり3月にいったんピークに持っていたり、WBCの公式球で調整をしないといけないのは、ピッチャーにとって大きな負担となっているのは間違いないでしょう。